菅野よう子/『創聖のアクエリオン』サントラ2

前作より3ヶ月という短いスパンで届けられたサントラ2作目。ほぼ同時期に録られたものを2枚に分けているのだろうが、今年リリースのサントラだけでも阿修羅城、アクエリ1、攻殻3に続いて既に4枚目。相変わらずのワーカホリックぶりである。マスタリングは前作に続いて宮本茂男。阿修羅城と同じくSterling Sound勢(テッド・ジェンセンorジョージ・マリノ)でないのは制作時期が攻殻と被っていたからだろうか。
クレジットを見ると、今堀恒雄(g)、渡辺等(b)、佐野康夫(ds)、浦田恵司/坂元俊介(syn)、篠崎正嗣ストリングスといった固定メンバーはいわばチーム菅野。ギターには当然ながら保刈久明、また田代耕一郎の名前もある。ベースにはバカボン鈴木(またBakabonって書かれてる)と前作に引き続き鈴木正人も。どの曲で弾いてるかは不明。パーカスにはこちらも前作に続いて三沢またろう。あとはコーラスでGey's AX等が参加してる程度でゲスト陣は比較的少なめ。その他こちらもお馴染みというべきか、オケはワルシャワ・フィル(&ワルシャワ・コーラス)。
さて、クレジットでは"Session in Japan""Session in Warsaw"と分けて記載してあることで、バンド主体の国内録音曲とワルシャワ録音のフルオケ曲が完全に分かれて収録されていると思いがちだが、実際音を聴いてみるとそれほど単純ではないと思われる(これまでの作品でも同様のことがあったが)。例えばWOLF'S RAINなんかだとどの曲がどこで録音されたかクレジットを見ればほぼ分かる様記載されてたのに対し、その辺りがうまくごまかされているというか、微妙なのが気になる。菅野さんと保刈さんの作編曲共同名義の理由に加え、この点にも着目(着耳?)しながら聴いてみると面白いものがある。ということで、クレジットに加え実際に音を聴いてみて分析してみた。
完全国内録音と思われるのはM-1、3、7、8、9、10、17。M-1は先行シングルカットされた2代目OP「Go Tight!」。今回はバージョン違いではない・・・はず。M-3はシングル『Go Tight!』のC/Wだった「エスペランサ!」の続編的な、フラメンコチックなアコギとパーカス、Ole!Aquarionなるコーラス隊(謎。素人くさいのでその場にいたミュージシャンとかスタッフ陣と思われ)をフィーチャーした哀愁ある菅野風サンバ。M-7はGabriela Robinのvoをアコギ+ストリングスが静かに盛り上げる、「Moon」を思わせる穏やかな1曲。M-8は篠崎さんのバイオリンがノイジーな打ち込みリズムの中を舞い踊る小曲。メロディからすると菅野さん作曲っぽいが打ち込みは保刈さんと思われ。妙に乾いた音色のバッキングの弦楽器は田代さんのギターだろうか。しかしこのバイオリンの奏法は何気にかなりのテクニックを要しそう。M-9は次々と表情を変える打ち込みとギターで保刈曲確定・・・でもこの弦が篠崎ストリングスだとするとストリングスアレンジを菅野さんがやってるかも。M-10はAKINOのvo。いかにも真綾が歌いそうな雰囲気で(^^;、かつて真綾用に作ったボツ曲だったりして。M-17は今作の目玉とも言える曲で、何とbless4をフィーチャーしての「創聖のアクエリオン」のゴスペルバージョン。歌詞もbless4により見事に英訳されている。コーラスでGey's AXも参加しているが、これも正体が謎ですね(初出はブレンパワードか)。
完全ワルシャワ録音曲は壮大な管弦からしてM-4、11、12、13、14、16で良いはず。当然菅野曲だろう。M-12、13ではワルシャワ・コーラス、M-14ではDorota Lachowriczというソプラノが参加(作詞はGabriela Robinポーランド人にはどんな歌詞カードを渡してるのか気になる・笑)。
残るM-2、5、6、15、18、19。結論から言うと、この6曲は国内とワルシャワの両方の音源をミックスさせたものと思われる。M-2はイントロから荘厳なワルシャワ・コーラスと力強いドラムのタム回しに若干のエレクトロニクスというハイブリッドな組み合わせ。途中からはコーラスが消え、アコギ、ベース、ストリングス(キレの良さから篠崎ストリングスと思われ)、エレクトロニクスをバックに「Go Tight!」同様のブレイクビーツというか、壮絶な手数でドラムが疾走しまくる。ドライブ感を煽るベースも等さんらしいライン取りでめちゃめちゃカッコいい。コーラスとドラムの微妙なズレから判断するに、おそらく元のコーラスを先にワルシャワで録音し、それに後日国内勢の演奏をオーバーダブ。後半は完全に国内録音。しかしこれが菅野さん曰く「CyberFolk」なんだろうか、この凄まじい高揚感は菅野さんならではのものと言え、こういう曲が聴けるからこそ菅野ファンはやめられないとしみじみ感じる。この曲もアルバムの目玉の一つと言えよう。M-5も非常に興味深く、イントロからフィーチャーされる華麗なピアノ弾きまくりには「これが菅野さんか!?」と誰もが面食らうだろう。アニメの世界観を反映させてうまくタイトルを付けたものである。もちろんピアノは菅野さんしかいないが、"Session in Warsaw"側に菅野さんのピアノクレジットがない(これまでの例だと向こうでピアノを弾いた場合は必ずクレジットがある)。とすると、このピアノは国内録音のオーバーダブか? ワルシャワでフルオケに合わせて弾いてみたがあまりに難しいフレーズのため上手くいかず、国内でリベンジした、なんて失礼な妄想も浮かぶ(笑)。M-6は今堀さんのアコギをフィーチャーした静謐な曲。ストリングスとフルートが聴こえることもありバックはおそらくワルシャワ・フィル。これはアコギが先で後からオケを被せたように思えるがちょっと分からん。M-15は保刈さんの録音/ミックスクレジットもあるため保刈曲で間違いないはず。ビバップの「23話」を思わせるダークなアンビエントだが、途中でワルシャワ・コーラスと思われるコーラスが登場。ってことは菅野さんも絡んでる? それよりサンプリングの可能性大か。M-18は基本的にワルシャワ・フィルのオケメインだが、「創聖のアクエリオン」のサビフレーズが出てくるところのコーラスで日本語歌詞を歌ってるのはGey's AXのはず。M-19はリーナ役の佐藤裕美がvoで、バックはワルシャワ・フィル&コーラス。菅野さんのピアノも入っているが、どちらも後で重ねたものでしょう。voの入りタイミングが若干コーラスから遅れてるのはオケを聴きながら歌入れをしたからと見た。
とんでもなく長文になってしまった(^^;。妄想爆発って感じで全部合ってるとも思わないが、それも楽しみの一つで。実はサントラ1の時はここまで考えてなかった。再度聴き直してみると新しい発見があるかも。個人的な好みからすれば攻殻3には適わないが、アクエリオンの2枚ではなかなか選びがたい。