『七都市物語 シェアードワールズ』

高校時代、『アルスラーン戦記』から入って『銀英伝』や『創竜伝』など本格的に手を出し始めていた頃の新作だったため思い入れも強く、また今から考えると作者が一番脂の乗っていた時期でもあり、個人的に田中芳樹作品の中でも屈指の出来と信じて疑わない『七都市物語』(ハヤカワ文庫)。いつか続編が出ると信じて早や15年、結局丸投げなのかよ…。シェアード化には強い反発を覚えるが好きな作品なので思わず買ってしまった。執筆陣も悪くないし各々この特殊な世界観を活かすべくアイデアを練ってきたなとは思う。しかし、田中芳樹ならではのあの「毒」が、やはり無い。当たり前だ、田中芳樹が書いてないんだから。我々ファンは彼が書いたテキストを読みたいのであって、彼が作った世界観を味わえればいいというものではない。最近の薬師寺涼子シリーズなどを見るとあまり期待もできないんだが。アルスラーンの新作が近いと聞いているが果たして。